天使が舞い降りる。



サイの胸元を拳で叩く。それでも涙は止まらない。


「ありがとな……涙」


サイが、そうやって優しく笑いかけてくれるから……。


「うわーーーーーーーーーん!!!!」


「ちょっとボリューム落として?近所迷惑だから」


そう言いながらも……私が泣き止むまで、サイはずっと頭をなでてくれていた。







時間がない。


「サイ、早く家に行って、お母さんに会いに行こう」


涙腺はまだ緩いままだけど……サイが優しく頭をなでてくれていたから、最初よりはだいぶ落ち着きを取り戻した。


私はサイの手を引く。


時間がないと言ったのは、決して最終電車の始発の時間のことじゃない。


さっきふと耳にした、奏ちゃんの言葉……


『夜のお仕事から帰ってくると、ママ、いつも泣いてるの』


時間的に、サイの母親はそろそろ仕事へ行ってしまうのではないだろうか……そう思ったから。


その前に、サイをお母さんに会わせてあげないと。


だけど、サイは……




「いや……もう帰ろう、涙」


私の言葉に一言、そう言った。







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