天使が舞い降りる。



入ってその左手側に……部屋と部屋とを区切る、大きな襖が4つある。


「どうぞ、こっち」


私はその襖の奥へと通された。


そこにあったのは……


「息子がもういないなんて……今でも、実感できないのよね」


小さな仏壇。そして仏壇の真ん中には……サイが高校の友達と楽しそうに笑っている写真が飾られていた。


コップの水に生けられた2本の花……。


そして……


「ふふっ、すごい量でしょ?」


もはや仏壇からあふれ出したように置かれてる、大量のお菓子。


「あなた以外にも、彩人のためのお線香をたてに来てくれた人がたくさんいてね……これはそのときの人たちが持ってきてくれたの」


こんなに……たくさん……


私は仏壇の前へと腰を下ろし、手を合わせて目を閉じた。


サイの死は奈々子だけじゃなく……たくさんの人を悲しませた……








「涙ちゃん……って、言ったかしら?」


「あ、はい」


「もしかして……あなたが彩人の彼女?」


「ち、違います!」





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