天使が舞い降りる。
お線香をたてた私は、テーブルでサイの母親と向かい合って座っていた。
危うく出されて麦茶を吹き出しそうになる。
「私じゃなくて……実は私の親友が、彩人君とお付き合いしていたんです」
「あらっ、そうなの?」
驚いたような声が上げられる。
やっぱり目の前のこの人が、子どもを愛さないなんて、そんな非道な大人にはとても見えなかった。
「彩人君の彼女……見たことないんですか?」
「実はそうなの」
私の質問に……サイのお母さんが寂しそうに笑う。
「彩人には妹がいてね、まだ今年5歳になったばかりなんだけど。奏って言ってね。奏は何回か会ってて、よく遊んでもらっていたらしいんだけど……
彩人、私のとこには一回も彼女、連れてきたこがないの」
「どうして……ですか?」
「あの子……私のこと、大嫌いだったのよ」
ゴトリ……と麦茶のコップをテーブルの上に置く。そんな私にサイのお母さんは続けた。
「彩人も奏も、願って産んだ子どもじゃなかったから」