天使が舞い降りる。
ドアノブをつかもうとした……私の手が止まる。
後ろをゆっくりと振り返る。同時に言葉を失った。
正座をしていたサイの母親の目から……ボロボロと涙がこぼれていた。
完璧だった化粧が崩れ落ちていく…。
「産んで……から?」
「最初はどうでもよかったのよ、あの子のことなんて……」
長い髪の毛が横に、前に……ばさりと垂れ下がる。まるで泣いている顔を必死で隠そうとするように。
彼女の声は震えていた。
「いようがいまいが、どうでもよかったの……!だけど、長い間育てていくうちに……変な感情が、あの子に湧き出してきたのよ……っ!!ちゃんと育てたなきゃ、っていう…変な感情がさあ…!!」
その声はだんだんと荒くなる。
ねえ、サイ……
「お酒を飲んで酔っ払って、心にも思っていなかったことを言って聞かれたとき、すぐに謝ろうとした…!でも、彩人の目は完全に私を軽蔑していて…とても今更弁解なんてできなかった…!母親としての責任をしっかりやっていくことが、あの子へのせめてもの償いだって思ったのよ!!」
真実の言葉……届いていますか……?
「いらない子なんて、もう思ってない!!じゃなきゃ、誰が苦しい家計背負ってまで子どもふたりも引き取るっていうのよ!!」
「真実」は、決して目に見えないもの……。