天使が舞い降りる。
「母親のとこに、オレを連れて行ってくれて……」
「『連れて行ってくれて』って……最終的に行くって決めたのはサイじゃん?」
「違うよ」
私の言葉に……目の前の向かいに座っているサイが、やんわりと笑う。
「涙がいなきゃオレ……ずっと母親の本音、聞けなかったと思うんだ。涙が行こうって言わなきゃ、オレ絶対家には行ってなかった」
私、別にそんな、大層なこと……
「涙が一緒に来てくれて……すごい正解だったな」
「サイ……」
サイの、嬉しそうな顔……
ずっと亀裂の入っていた、ふたりの仲を……こんな私でも、修復することができたなら嬉しい。
やっぱり私、サイの故郷に行ってよかったな……
いろいろあったけど、奏ちゃんや、サイのお母さんにも出会えた…。たくさんの人の想いや本音、切ない場面もあったけど、あったかい場面も確かに存在していて…。
「ねえ、サイ」
これで、サイの未練はひとつ
「ん?」
消えたことになる…。
「今度は……奈々子に会いに行こう?」