天使が舞い降りる。
「ねえ、サイ。私、前に言ったよね?サイがここにいるのは、やり残したことがあるからじゃないかって」
「うん」
この先に起こることなんて、私にはわからない。
もう、この世に存在しないサイが、これからどうなってしまうかなんて……
もしかしたら今この瞬間にも、サイは未練を果たすことなく消えてしまうかもしれないんだ。奈々子に最後、会う前に消えてしまうかもしれないんだ。
やることをやるまで、サイがこうして私の目の前にいてくれる保証は……どこにもない。
「あのさ、涙」
ふと、サイが口を開く。
「奈々子に会ったら……たぶん、オレはこの世から本当に消える。
「へ……?」
驚く私の目の前で、サイが切なげに笑った。
「奏の元気な顔が見れて、母親の知らなかった本音も聞けた。そのおかげかはわからないけど……鉛みたいに重かった体が、すげえ軽くなったんだ」
「……」
軽く……なった……
その軽くなった体が、更に軽くなったら……?
わからない。