天使が舞い降りる。
サイのことがよっぽどショックで、もはや電話に出ることも億劫なのか
それとも本当の体調が悪くて寝込んでいるのか……
絶対前者だ。
今度は、奈々子の家の方へと掛けなおす。
絶対に……伝えなければいけないことがある。
『はい、常盤です』
3コールほど鳴ったところで、あっさりと女性の人が電話に出た。
この透き通った声は……奈々子のお母さんだ。
「もしもし?涙です」
『あらー、涙ちゃん?』
電話の向こうで、嬉しそうな声がする。このまま会話を弾ませたいところだけど……時間がない。
『久しぶりねー、学校は?』
「それより、あの……奈々子に、代わってもらえますか?」
『え?奈々子?』
奈々子のお母さんの声に、動揺と困惑の色が浮かぶ。
『ごめんなさいね、涙ちゃん。あの子、体調が悪くて寝込んでて……部屋からも出ないし、今はだれとも話したくないみたいなの』
「そうですか……じゃあ、奈々子に伝えてもらえますか?」