天使が舞い降りる。
「はあ……はあ……」
ほどよい夏風が、体を包み込む。
「涙……」
同時に、視界に映ったのは……
屋上にフェンスから長い髪の毛をなびかせる……制服姿の奈々子がいた。
「涙……。なんで、奈々子が……どうなって……」
背後から、サイの戸惑いの声が聞こえる。
「涙……」
少し離れた数メートル先のところでも、奈々子が同じようにして私の名前を呼んだ。
「サイ」
私はそこではじめて、後ろを振り返る。
「私に後悔のない人生を送れって言ったのは……サイだよね?」
にっこりと笑う。
戸惑うサイの背中を押すこと…
大好きな人に、また会わせること…
それが私の……サイにできる精一杯だ。