天使が舞い降りる。



午前中最後の授業が終わったのだ。


……不思議な夢を見た。


部屋の地面に、大量の手のひらサイズのピカチュウがいっぱいいて。一番丸い、ポテポテしたピカチュウを捕まえた夢。


ピカチュウって、ネズミじゃなくてハムスターだったんだ…





ん?


寝ぼけ眼で突っ伏していた顔を上げて、隣に咲乃がいないことに気づく。


代わりに咲乃のピンク色の弁当箱が、チョコンと机の上に置かれていた。


お昼は……一緒に食べてもいいんだよね?


一応、前の休み時間に仲直りはしたし、放課後はカラオケ行くんだし…。


キョロキョロとあたりを見渡してみる。翔子と愛姫の姿も見当たらない。


私が寝ていたから、3人でトイレにでも行ったのだろうか…?


起こしてくれればよかったのに。


実は私も、朝から一度もトイレに行っていなかった。


今から行っても、途中で会えるかもしれない。そう思い、私は席から立ち上がると教室を出た。


トイレに向かう途中、ついでに4組の教室の中をチラッと覗き込んでみる。


もしかしたら、奈々子が保健室から戻ってきているんじゃないかも、って。だけど、やっぱり奈々子はいないようだった。朝と同様、筆箱がひとつ机の上に置かれているだけ。


奈々子は午前中いっぱいの授業を休んだことになる。


咲乃たちとお昼ごはんを食べたら、保健室に行ってみよう…


4組の教室から静かに離れる。廊下を真っ直ぐ歩いて行くと、学年共通の女子トイレが見えてきた。






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