天使が舞い降りる。



トイレの前までたどり着き、ドアノブに手を伸ばしたときだった。






「つうかさー、朝の涙、まじムカつかなかった?」


「はいはい、何度も聞いたって、それ」


え…


「話を楽しくしてただけじゃんね、うちら。それなのに『黙れ』とかさー」


「なんでいきなりキレたの?」


手を伸ばした体勢のまま……私は固まった。


薄いドア、一枚の向こうから聞こえるのは…間違いなく、咲乃たちの声だ。


私の話をしてる…?


3人は手を洗う水道の前で立ち話をしているようだった。微かに水の流れる音がする。


「さあ……咲乃が常盤奈々子の悪口言ったからなんじゃないの?」


「はあ?涙、常盤と仲良かったっけ?」


翔子の言葉に、咲乃が不機嫌さを露わにして言った。


「うっざ。友達かなんだかしらないけどさ、正義のヒーロー気取りかって感じなんだけど」


「そういう年頃なんでしょ」


「人に『黙れ』はなくない?ていうか涙ってさー、ぶっちゃけ話合わないし、一緒にいて疲れるんだよねー」


…っ!


目の前が、真っ暗になりそうな衝動に駆られる。





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