天使が舞い降りる。



―パタン…


「ごめんね、サイ。イヤなとこ、見せちゃったね…」


部屋に入るなり…


私はかばんをベッドに放り投げ、後ろに立っているであろうサイに謝罪した。


本当にイヤなものを見せてしまった。


家庭内のゴダゴダ…、きっとサイにとって気持ちのいいものではなかったはず。


「そんなことより…顔、大丈夫?」


後ろから、サイが私に問いかけてくる。


「平気…」


「いつものことだし」、と口元に力なく笑みを浮かべながら、制服のスカーフをシュルリとほどいたときだった。


「…っ」


背後にいたはずのサイが、いきなり私の目の前へと現れる。


今の顔を見られたくなくて、反射的に顔を反らそうとしたが……遅かった。


「泣いてるじゃん。そんなに痛かった?」


サイの指が…赤く腫れた私の頬へと触れる。


長くて、白い…


綺麗な指…。


唐突のことにかなり驚いたけど…


その優しい感触が、あまりにも優しくて、心地よくて…







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