天使が舞い降りる。
「ちょっと涙!せっかく作ったたんだから残さず食べなさい!」
そんな母の言葉が後ろから聞こえたけど、私は無視してリビングを出た。
足早に自分の部屋へと向かい、念のためすぐにカギを閉める。
勉強、いい職、勉強、いい職…
あの人の頭にはそれしかないのだろうか…
「クソばばあ……死ねっ!」
―ドカ!
床に転がっていた、バレーボールを思いっきり蹴る。
「先輩のぶんもがんばります」「高校行ってもがんばてください」「卒業おめでとうございます!」……そんな心にもない言葉が書かれた、中学校の部活の卒業記念にもらったもの。
―ドゴン!
「ごぶっ!!」
ボールは壁に当たって、リバウンドし…
蹴った仕返しだと言わんばかりに私の顔面に直撃した。
なんとも色気のない声が口から出る。
いっ……たあ……
「もう、あたしが何したっていうのよ!?」
いや……最初に足出したのは自分なんだけどさ。
顔をおさえながら、後輩のお飾りの文字がついたボールを強く睨みつけ、イライラがさらに悪化した私はやつあたり気味に部屋の窓を全開にした。
冷え込む夜といえど、夏はまだまだこれからだ。