天使が舞い降りる。
「涙、なんでそんなに濡れてるの……?」
「ああ…」
言うのは、少し恥ずかしい。だけど、黙っているわけにもいかなくて…
「サ、サイのこと……ずっと探していたから……」
「ずっとって、この雨の中を?」
私の言葉に、サイの目が驚いたように見開かれる。
「うん…」
「バカ!風邪引いたらどうすんだよ!」
「えっ…」
グイッと、突然手を強く握られる。そしてサイは、公園から出ると私の落としたかばんをヒョイっと持ち上げた。
今……本気で心配してくれた……
「サイ、どこ行くの?」
「涙の家に決まってるじゃん。早く風呂に入んないと」
「か、かばんは私が持つよ?」
「ええ、なんで?」
なんで、って……
「まわりから見たら、かばんが宙を浮いてることになってるじゃん」
サイの姿は見えないんだし…。
ということは、私が浮いているかばんを歩いて追いかけているという、変な図ができあがってしまう。
マジックの練習中か!
……っていやいや、ひとりツッコミしてる場合じゃなくて。