天使が舞い降りる。



台所へ目をやると、大好きな肉じゃがが大きな鍋の中に用意されている。


置手紙のすぐ横には、ラップにくるまれた卵サラダ。




よかった。お母さんがいなくて。


こんな雨の中、傘も差さずにずぶ濡れでいるところを見られたら……きっとうるさいから。


ホッと息をついたときだった。




「こら!」


「わっ!」


背後からの声と同時に、頭に何かを被せられる。


「夜ご飯のメニューチェックしてないで、早く風呂入る準備しろって!」


サイだった。ちなみ頭に被せられたのはタオルで、手でガシガシと濡れた髪を拭かれる。


「い、痛い痛い!」


「早く頭拭かないからだろ!」


サイにお咎めをもらった私は、言われた通り着替えを用意しお風呂の準備を始めた。







「ふう……」


制服を乾燥機に入れ、ドライヤーで髪を乾かした私は自分の部屋へと向かった。


「サイー?」


ドアを開けると、まるで自分の部屋のようにサイがベッドの上で横になっている。しかも本棚から取り出したのだろう、少女漫画を読みながら……。


「……」


私のベッドと漫画なんですけど……





< 95 / 174 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop