ルージュのキスは恋の始まり
 気がつくと美優にそう声をかけていた。

 彼女は俺を見て不機嫌になったが、そんな表情もまた一興。

 美優をからかうのは楽しい。

 彼女の反応は素直で、俺に媚びてきたような女どもとは違う。

 美優と言葉のやり取りをちょっと楽しんだ後、俺は彼女に一歩踏み込んだ。

 そして、美優の様子を見ながら優しく口付ける。

 彼女が怯えたらいつでも止めるつもりで。

 ホント、俺らしくない。

 片岡がいたら俺を嘲笑っていたかもしれない。

 愛おしいってこういう事なのだろうか?

 自分の事よりは、美優の気持ちを大事にしたくなる。

 そっと包み込むように。

 大事に・・大事にして俺が守ってやりたいと。

 美優の中にある恐怖を取り除いてやりたいと。
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