ルージュのキスは恋の始まり
 彼女は俺から逃げなかった。

 戸惑いは感じていたようだが、俺が近づいても怯える様子はない。

 少しずつ彼女の警戒心を解いていけばいい。

 そう思っていたが、やはり欲が出てしまった。

 美優が逃げないのを半ば確信しながら、また彼女の唇を奪った。

 自分のキスに応える美優を見て嬉しくなる。

 自制がきくうちに終わらせたが、本当は抱き締めてもっとあの唇を味わいたかった。

 美優と別れて社長室に戻ると、片岡が仁王立ちして立っていた。

 かなり機嫌が悪そうだ。

「どこで油売ってたんですか?探しましたよ」

「ああ、悪い。ちょっと外の空気吸いたくなった」

 俺の言葉に片岡はますます不機嫌になる。
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