ルージュのキスは恋の始まり
 百合ちゃんが控え室のドアをノックした。

「百合です。美優さんを連れてきましたよ」

「・・・・」

 百合ちゃんに腕を引っ張られて中に入ると、大河がスーツ姿で優雅にコーヒーを飲んでいた。

 準備は出来ていて後はスタッフに声をかけられるのを待つだけ。

 私にはそう思える。

 この余裕。

 ペンダントがなくてごねてる人間とは思えない。

「もう時間がないから早速始めてくれる?」

「大河?」

 チラリと私に目をやると、大河が近くにいたスタッフに声をかける。

「美優さん、着替えますよ」

 百合ちゃんが私を控え室の隅にあるフィッティングルームに連れていく。
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