ルージュのキスは恋の始まり
 カーテンを閉めると、百合ちゃんはフックにかけてあるパープルの可愛いスーツを指差した。

「これに着替えて下さい」

「百合ちゃん、どういう事?」

「時間がないので私、手伝いますね」

 百合ちゃんが私の服を脱がしていく。

「ち、ちょっと」

 時間がないって誤魔化さないで欲しい。

 あっという間にスーツ姿になると、今度はフィッティングルームを出て大河の横の椅子に座らされた。

「これ、邪魔だから預かっとくね」

 そう言って大河が私の眼鏡を取る。

「ちょっと、大河!これじゃあ、何も見えないわ。どういう事なの?説明して!」

「俺の相手役のモデルの子が風邪引いちゃってさあ。代役が見つからないって言うから、美優にやってもらおうと思って」
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