ルージュのキスは恋の始まり
「美優には荒療治が必要だよ。このままだと行かず後家になるよ。俺は姉さんの将来が心配なんだよ」

「限度があるわよ」

「いい?撮るのは2パターン。最初はビルの前で待ち合わせする恋人同士。美優が待ってて、俺が美優を見つけてキスする振りをするから。次が雨のシーンで泣いて走り去る美優を捕まえてキスをする」

 大河は私の気持ちを無視して撮影内容を説明する。

「立ってるだけじゃないじゃない!」

 私に演技しろなんて無茶振りも良いとこだ。

「そんな突っ込みしてくるなんて意外と冷静だね。メイクさんも待ってるしちゃんとお化粧してもらいなよ」

「大河!」

「はい、監督が待ちくたびれてるみたいなので、じっとしてて下さいね」

「・・・・」

 大河の横にいたヘアメイクさんが有無を言わせぬ表情で、私の顔にメイクを施していく。
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