ルージュのキスは恋の始まり
 その間ずっと私は、玲王にもらったルージュを何かにすがるように握り締めていた。

「美優、眉間に皺。老けるよ。怖がってないで鏡見てご覧よ」

 大河に言われ渋々鏡を見ると、そこには見慣れぬ女の姿。

 自分だとは思うけど、こんなに完璧にメイクをしたのは久々だ。

 それにやっぱりプロの腕は違う。

「すっごく綺麗だよ。姉にしとくのはもったいないくらい」

 鏡の中で大河が微笑む。

「冗談はやめてよ」

 私は鏡の中の大河を睨み付けた。

「髪留め取りますね。綺麗なストレートなのに束ねとくなんてもったいない」

 ヘアメイクさんがバレッタをとって髪に丁寧にアイロンをかけていく。

「はい、完成です」

 ヘアメイクさんは満足気に呟く。
< 121 / 391 >

この作品をシェア

pagetop