ルージュのキスは恋の始まり
 私の仕上がりを見た大河も「うん、完璧だね」と、腕を組ながら頷いた。

 ただ一人納得いかないのは私。

 ブスッとしていると、大河が意地悪な目をしてとんでもないことを言った。

「そんな表情してると、本番で本当にキスするよ」

「た、た、大河!」

 私が口をパクパクさせていると、大河が私の両肩に手を置いた。

「落ち着いて、美優。美優がちゃんとしてくれたらキスしないから」

 悪魔な表情でにっこり微笑しながら大河が私を脅す。

 20年以上一緒にいて初めて知る大河の別の顔。

 この子・・・一体誰?

 本当に大河なの?

 腹黒いと感じた事はあっても、それは他人に対してだけで・・・・。

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