ルージュのキスは恋の始まり
 大河の眼光が鋭くなる。

 これは・・弟の最後通帳だ。

 がっくりとうなだれ、渋々スタッフに案内された立ち位置に立つ。

 訳もわからぬうちに監督の声がして、撮影が始まった。

 私がボーッと立っていると、大河が私を見つけてこっちに走ってくる。

 全然知らない大河の表情。

 完全に演技に入っている。

 私に向けられる視線も初めて見るもので・・・・。

「待たせてごめん」

 私の目を見ながら謝ると、大河は私の両肩に手を置いて私に顔を近づける。

「た・・いが?」

 本当に唇すれすれのとこまで大河の唇が近づいてきて思わず声が出た。
< 124 / 391 >

この作品をシェア

pagetop