ルージュのキスは恋の始まり
 冷たい表情で大河が私に告げる。

「龍神社長も他のスタッフも美優を待ってる。ほら、行くよ」

 大河に腕を捕まれ控え室を出る。

 今日の弟はやっぱりいつもと違う。

 いつもならもっと私の気持ちを尊重してくれるのに、どうして今日はこんなに突き放すの?

 玲王は少し離れた位置で私を見ている。

 雨の準備もオーケーのようで、後は私の涙待ち。

「・・・・」

 女優じゃないのにそんな都合よく涙なんて出てこない。

 焦れば焦るほど、どうやって泣いていいのかわからなくなる。

 何十分経過したのだろう。

 次第にみんながイライラしてくるのを肌で感じた。

 ああ、このまま消えてしまえたら良いのに。

「泣けないなら他のモデル使うぞ!」

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