ルージュのキスは恋の始まり
 彼にすがりたかったのかもしれない。

 現実から逃げたかった。

「どうした?あいつに何を言われた?」

 私の頬に手を添えながら、玲王が優しく聞いてくる。

「・・・家族ごっこはおしまいだって」

 私は笑って見せる。

 もう何を信じて良いのかわからない。

 信じられるものってあるのだろうか。

「これで・・本当に一人ぼっちになっちゃった」

 玲王に向かって微笑すると、知らず一筋の涙が溢れた。

 その涙を彼が指でそっと拭う。

「今日のお前は疲れきってる。ゆっくり休め」

 俺様な言い方なのに、優しく聞こえるのは何故なんだろう。

 玲王の顔をじっと見つめていると、大河が花束を持って現れた。

「いつまでいちゃついてるつもり?これは今日の一番の功労者に」
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