ルージュのキスは恋の始まり
 本当にしていないとはいえ、あそこまで絡まれるとイライラする。

 完全に嫉妬だ。

 高橋はそんな俺を見てほくそ笑んでいた。

 奴はかなり性格が悪い。

 俺が美優に気があるのをわかってて見せつけているのだ。

 そして、俺に挑戦状を叩きつけてきた。

「龍神さんがやらないのなら、今度はほんとに美優にキスしますよ」

 雨のシーンに移る時、高橋はそう俺に耳打ちしてきた。

 奴が俺の表情を探るように見る。

「良いだろう」

 俺は渋々了承した。

 高橋には俺の事答えなんて聞かなくてもわかっていたはずだ。

 全ては奴の計画通りなのだろう。

 美優と俺をこの撮影に引きずり込んだ事も。

 美優を泣かせた事も。
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