ルージュのキスは恋の始まり
 美優の母親が亡くなった時、多分、俺の中で何かが変わったんだと思う。

 自分の母親が亡くなったというのに、美優は俺と親父の前では絶対に泣かなかった。

「僕が美優を守るから、安心して寝ていいよ。僕は美優を置いて絶対に死なない」

「大河、ずっと家族でいてね。約束だよ」

「うん、約束する」

 眠れぬ美優の布団に一緒に入って、そう言って慰める日々が続いた。

 泣かない美優を見てるのが辛くて、どんな事があっても守らなければってこの時心に誓った。

 美優の男になりたいって思った事がないと言えば嘘になる。

 でも、美優が望んでいるのは俺が家族でいることだ。

 俺は美優に与えられた役を演じる事にした。

 もちろん思春期の頃は、何度も誘惑に負けそうになった。

 でも、美優を守る事の方が大事で、結局俺は弟の役を演じ続けた。
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