ルージュのキスは恋の始まり
 美優と玲王のキスを見ても冷静ではいられなかった。

 見てられなかった。

 だが、見なければ自分が美優から離れられない。

 俺は必要ないんだ。 

 もう必要ない。

 自分に暗示をかけるように頭の中でその言葉を繰り返す。

 美優を騙すのは辛かったけど、これで良かったんだと思う。

 マネージャーの脇坂さんは俺の暴走にカンカンに怒ったけど。

 今、彼は先に事務所の社長に状況説明に行っている。

 俺も後で社長にたっぷり怒られるだろう。

「渡米するってハリウッドか?」

 玲王は頭の回転が早い。

 多くを語らなくても察してくれるのはこちらとしても楽だ。

「そう。前々からオファーはあったんだけど、今回はシナリオも良いし、良い役なんだ」

「そうか。美優はその事を知ってるのか」
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