ルージュのキスは恋の始まり
 こいつ酔ってるのか?

 シャンパンとブランデーを少し飲んだだけで?

「お前は幼児か。ったく、世話の焼ける」

 溜め息をつきながら美優を抱き上げると、彼女は俺の首に手を絡める。

 だが、何かを思い出したのか俺の首の痣にそっと触れた。

「この痣まだ痛む?」

 聞き慣れた質問。

 いや、違うか。

 普通は、この痣どうしたって聞く。

 だが、彼女のは好奇心と言うより、心から心配してるらしい。

 酔っているはずなのに、俺の痣に触れるその手は何か気遣うように優しい。

「・・・いいや。ずいぶん昔のだから、痛みはない」

 あるのはその時の記憶と感覚。

 たまに夢にうなされ眠れない事もある。
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