ルージュのキスは恋の始まり
 そして、私をずっと苦しめてきたストーカー。

 ガタガタと震えが来て蛇に睨まれた蛙のように私の身体は動かなくなる。

 怖い。

 怖くて叫ぶことすら出来ない。

 私の目も瞬きすることも出来ない。

 佐藤から目を離せないのだ。

 やだ。

 もう顔も見たくなかったのにどうして?

 お願い、来ないで。

「久しぶり、美優。会いたかったよ」

 私にすうっと近づいて来て、佐藤は残酷な笑みを浮かべるとそう言った。

 お願い、触らないで。

 私の悲痛の叫びは声にもならなかった。
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