ルージュのキスは恋の始まり
 だが、佐藤はゆっくりと起き上がると、歩さんを睨み付ける。

「この女!」

 佐藤の頬は真っ赤に腫れて、血が滲んでいる。

「私に蹴られてもまだそんな元気あるんだ。しぶとい男ってホント嫌ね」

 歩さんはそんな佐藤に歩み寄り、佐藤の腹を尖ったヒールで蹴った。

「うっ!」

 佐藤が腹部を片手で押さえて呻く。

 それでも、ふらふらになりながら立ち上がると、突然私の腕を掴んだ。

「お前には用はない。失せろ」

「ちょっと、その子離しなさいよ」 

 歩さんが近づこうとすると、佐藤は私の腕を乱暴にひねりあげた。

「いたっ!」

 腕に痛みが走る。
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