ルージュのキスは恋の始まり
 そして、私を促すと車に乗り込んだ。

「美優さんは大丈夫ですか?」

 片岡さんが私を気遣う。

「ちょっと切っただけだから」

 私は笑って見せたが、玲王は片眉を上げた。

「ちょっと?こんな深く切れてんのに?これ、縫うかもしれないぞ。麻酔痛くても文句言うなよ。片岡、病院まで頼む」

「・・・ごめんなさい」

 手の痛みよりは玲王が怒ってる事の方が辛い。

「・・・・」

 私が謝っても玲王はまだ怒っていて、嫌な沈黙が続く。

 それを見かねた片岡さんが話題を変えた。

「それにしても、誰と電話で話してるのかと思えば、あの男女だったんですね?大して役に立ってないんじゃないですか?」

「歩がいなかったら美優はどこかに連れてかれてた。そう考えるとぞっとする」

 玲王は私の肩を抱くと、私の頭を彼の胸に預けさせた。
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