ルージュのキスは恋の始まり
 玲王の心臓の鼓動が聞こえる。

 でも、かなり早くてびっくりした。

「玲王が血相変えて社に戻れなんて言うから何事かと思いましたけど、美優さんが誘拐されなくて本当に良かったです」

 玲王が血相変えたって本当に?

 信じられなくて玲王の顔を見ると、彼は仏頂面で言った。

「片岡、余計な事言わずに運転に集中しろ。ああ、もうお前も俺の顔見るな!」 

 ばつが悪いのだろうか。

 あの玲王がちょっとうろたえている。

「まだ怒ってるの?」

「お前にじゃない。結果的にお前に怪我をさせた俺にだ」

 玲王がその瞳を曇らせる。

「ごめんなさい」

「だから、お前が謝るな」

「・・・はい」

「それから、もうあんな無茶するな。心臓止まるかと思った」
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