ルージュのキスは恋の始まり
 宣伝部の居室にいる間、どんなに彼女に陰険な事を言われても私はずっと無言で過ごした。

 あ~あ、明日にでも研究室に戻れないかな?

 結局、私が宣伝部に異動しても、全然キャリアがいかせないし・・・・。

 今日終わったら玲王に話してみよう。

 そんな事を考えていると、大河が到着した。

 大河はCM撮影の時と同じスーツ姿だった。

 彼の横にはモデルの女の子がいる。

 恐らく出演モデルとして紹介する子だろう。

 大河がその子の腰に手を当ててエスコートする。

 その時、私と目が合った。

「・・・・」 

 目が笑ってた。

 いつもの優しい大河だ。

 大河があのスーツを着ていると、あの時の辛くて哀しいキスを思い出すけど、でも大河がいつも通りで嬉しい。
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