ルージュのキスは恋の始まり
「下らない」

 そんなの俺だってすでに味わってる。

 首の痣に手をやる。

 あの時、母親が力を緩めなければ俺は死んでた。

 過去からは逃れられない。

 だが、それに囚われたままじゃあ、前に進めないだろう?

「自分だけが不幸だと思うな。お前は不幸な自分に酔ってるんだよ」

「勝手な事言わないでください」

「勝手なのはお前だろう?勝手に俺を恨んで、勝手に会社の情報を漏らして。高橋大河が教えてくれたよ。うちの情報が漏れてるって。お前以外、関係者で彬とつるむ奴なんていないさ。お前と彬の利害が一致したから彬の言うように動いたんだろう?」

「俺が頼んだ訳じゃない!」

 蚊帳の外にいた彬が急に話に割って入る。
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