ルージュのキスは恋の始まり
「玲王」

 近くにいた美優が切なそうな表情で俺を見ていたが、彼女の腕をつかんで構わず歩き続けた。

 ちょうど視界に歩の姿が目に入り、奴に声をかける。

「お前、車運転しろ」

 俺が不機嫌な顔で言うと、歩も口を尖らせた。

「はあ?片岡が一緒でしょ?片岡に頼めば良いじゃない」

「片岡は首にした」

「え?それどう言う事よ?」

 歩が力一杯俺の肩を掴む。

 ああ、もう、いちいちウザイこの男女。

「お前、煩い」

 短くそう言って歩をひと睨みする。

「・・・・」

 俺の静かな怒りが伝わったのか、歩が黙り込む。

 車に乗り込むと、美優が何も言わずに俺の手を握ってきた。

 多分、さっきの会話で大体の状況はわかったのだろう。
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