ルージュのキスは恋の始まり
 だが、今の俺は大丈夫だとこの手を握り返す余裕もない。

 思っていたよりダメージは大きいかもしれない。

 片岡の事を調べた時に、ある程度この展開を予想していたのに。

 俺は片岡なら裏切らないって心の中で信じていたのだろうか?

 これくらいの事で・・・情けない男だって思う。

 俺らしくない。

 ああ、考えるのは止めた。

「ねえ、このお通夜みたいな空気どうにかならないの?」

 歩がぶつくさ文句を言ったが、無視した。

 こいつの相手をする気分じゃない。

 早くうちに帰って一人になりたい。

 今夜は何も考えずに寝たい。

 そう思った。

 家に着くと、俺と美優は無言のまま家の中に入る。
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