ルージュのキスは恋の始まり
「間違えた訳じゃない」

 美優が瞳を潤ませながら俺を見上げる。

 俺も馬鹿じゃない。

 この雰囲気・・次に美優が何を言おうとしているのかわかる。

 だが、タイミングが悪すぎる。

 今日の俺は冷静じゃない。

 頭をガシガシかきながら、美優から視線をそらす。

「間違えてるだろ?食事も済ませたんなら、お前もシャワー浴びて寝ろ」

 素っ気ない言い方になったが、それでここを出て行っていってくれればそれでいい。

 これ以上美優と一緒にいると、彼女を傷つけてしまいそうだ。

「今夜は一緒にいたいの」 

 美優がうつ向きながら俺の上着をぎゅっと掴む。

「お前、それがどういう意味かわかってて言ってるのか?」

 俺が美優の顎をつかんで顔を上げさせると、彼女は俺の目を見てこくりと頷いた。
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