ルージュのキスは恋の始まり
 反吐が出る。

 歩の奴、こんな会食の予定、勝手に入れやがって。

 終始不愉快なまま会食が終わる。

 あの場でキレなかった俺の忍耐力を褒めてやりたい。

 待たせていた車に乗り込むと、開口一番に歩をとっちめた。

「ったく、お前はスケジュール管理もまともに出来ないのか?俺の私用も確認せずに毎日毎日ポンポン会食の予定入れるな」

 片岡の後任に歩を据えたが、俺は選択を誤ったらしい。

 歩の無茶苦茶なスケジューリングで俺の帰りが最近ずっと深夜になる。

 おまけに始業前に会議なんか入れて、美優とはずっとすれ違いの生活だった。

 あの夜から俺達はまともに話をしていない。

 今日こそはって思ってても、歩が勝手に予定を入れてくる。

「だって、仕方ないでしょう?CMの反響すごくて、あんた時の人なんだもの。あんたを利用したい輩が一杯ね」
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