ルージュのキスは恋の始まり
 今日の雰囲気だと年内にも勝手に婚約させられそうだ。

 それこそ冗談じゃない。

「歩、西園寺の周辺を洗え。叩けば埃が出るはずだ」

「人使い荒いわね。危険手当てつけなさいよ」

 歩が口を尖らせる。

「だったら、変な予定入れるな!まずは俺に確認しろ」

「は~い。ほんとあんたって横暴。そのうち美優ちゃん逃げ出すんじゃないの」

 美優という言葉に胸がズキンと痛くなる。

「送り迎えの時の美優の様子はどうだ?」

 俺とすれ違いの生活になっても、美優の送迎は歩に任せていた。

 また1人で電車に乗って過呼吸を起こされても困る。

 ストーカーは捕まったとはいえ、精神的に彼女が大丈夫だとは言えない。

「暗いわよ。心ここにあらずって感じでね。西園寺との事、美優ちゃん知ってるの?」

「西園寺の娘とは結婚する気もないし、まだ言ってない」
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