ルージュのキスは恋の始まり
 マンションに着くと、歩には声をかけずにそのまま車を降りた。

 CM効果で口紅の売り上げは倍増。

 今、工場で増産している分もほとんどは予約注文で埋まっている。

 相乗効果で他の化粧品の売り上げも伸びている。

 社長としては有り難い。

 だが、俺の胸の中のモヤモヤが消えない。

 気がつくと家に帰る足取りも重くなってる。

 鍵を開けて中に入ると、家の中は真っ暗だった。

 もう深夜の1時過ぎ。

 美優だって寝てるだろう。

 そっと靴を脱いで、真っ先に彼女のいる客室に向かう。

 ここ最近では、それが習慣になっていた。

 ゆっくりドアを開けて美優を起こさないように中に入る。

 ここ数日、忙しくて食事もメモも用意できていない。

 しっかり食べているのだろうか?

 手の怪我は良くなっただろうか?
< 258 / 391 >

この作品をシェア

pagetop