ルージュのキスは恋の始まり
23、私の居場所 ー 美優side
「あれ、橘先輩。どうしたんですか?宣伝部の方はいいんですか?」

 久し振りにラボに足を踏み入れると、井上君がドアを開けてくれた。

「今日はサボりなの。井上君と亜紀ちゃんの顔見たくなちゃって。亜紀ちゃんは今日は休み?」

 キョロキョロしながら亜紀ちゃんの姿を探すが、近くにいる気配がない。

「奥で原料の計量してますよ」
 
 井上君がそう言うので奥に向かうと、何故か亜紀ちゃんが顔を真っ赤にしてしゃがみ込んでいた。

「亜紀ちゃん?どうしたの?」

 私が声をかけると、亜紀ちゃんが慌てて立ち上がる。

「あっ、美優先輩!ひょっとして・・・さっきの見ました?」

 亜紀ちゃんがうなじを隠しながら私に聞いてくる。

「さっきって?今来たばっかりなんだけど」

「あっ、あっ、そうですよね。何でもないです。何でもないです。気にしないで下さい」
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