ルージュのキスは恋の始まり
 あのジーンズに黒のポロシャツ。

 そして、あの白髪。

「ガクさん!」

 私が声をかけると、ガクさんは私の方を見てにこやかに笑った。

「あれっ、珍しい人がいますね。お知り合いですか?」

 井上君がちょっと驚いた様子で私に聞いてくる。

「ガクさんは私の出身大学の研究室の院生でね。ここの就職を世話してくれて・・・・」

「いえ、そういう事じゃなくて、うちの会長とお知り合いなんですねって話で」

「会長?」

「橘先輩もうちの研究所の前にある銅像見た事あるでしょう?龍神学(まなぶ)。アンジュ創立者でうちの会長ですよ」

「・・・・」

 今思えば、ガクさんの電話1本ですぐにうちの会社に就職が決まった。
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