ルージュのキスは恋の始まり
「あのCMの女性モデル、本当は橘先輩でしょう?」

「え?」

「亜紀は気づいてませんけど、わかりますよ。僕も男だし、職業柄・・ね」

 井上君がフッと微笑する。

 本当に彼は変わった。

 色気があると言うか、何だか妖艶な雰囲気で・・・・いつもの小動物的な井上君じゃない。

「ひょっとして、井上君、私の事情知ってて演技してくれてたの?」

「まあ、橘先輩だけのためじゃないですけど。欲しいものが出来たんで、全力で取りにいったんですよ」

「亜紀ちゃんだね。良いなあ」

「橘先輩も変わりましたね。絶対自分から口紅なんて塗らなかったのに。そのルージュとっても似合ってますよ」
 
「ふふ。ありがと。好きな人にもらったの」
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