ルージュのキスは恋の始まり
 よほど時間がないのか、大河は用件だけ言ってすぐに電話を切った。

 面倒な事になった。

 だが、大河に美優は元気か?と聞かれずとりあえずホッとする。

 その質問をされたらきっと無言だっただろう。

 俺自身が知りたいくらいだ。

 美優とすれ違いの生活はまだ続いている。

 あの夜から1ヶ月以上経つ。

 社内で美優を見かけてもほんの数秒。

 声をかける間もない。

 一体何をしてるんだ、俺は?

 自分自身にイライラする。

 だが、今はそれよりもまずやることがある。

 傍らにいた歩に声をかけた。

「歩、例の件どうなった?」

「バッチリよ。西園寺の周辺洗ってたら、最終的に彬にたどり着いたわ」

 歩がニンマリ笑う。
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