ルージュのキスは恋の始まり
 玲王もそれを望んでいるんじゃないだろうか?

 彼の口から迷惑だって言葉を聞きたくない。

 百合ちゃんにどこかいい物件ないか聞いてみようかな。

 午前中は商品カタログの在庫のチェックで終わった。

 私に回ってくる仕事なんてこの程度のものしかない。

 打合せや会議にも参加させてもらえない。

 私の意見なんて誰も聞かない。

 ランチの時間になっても、自席でゼリーと野菜ジュースを飲んで済ます。

 今は居室に一人しかいないというのに、何故か息苦しい。

 辛くて仕方がない。

「私の存在価値ってないよね」

 乾いた笑いを浮かべながらポツリと呟く。

 心が壊れそうだった。

 淡々とワードで退職願を打ってプリントアウトすると、その横に自筆でサインをした。

 本来なら文面も自筆で書くべきだが、もうそんな気遣いはいらない。
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