ルージュのキスは恋の始まり
 百合ちゃんのマンションに着いたが、彼女はまだ不在だった。

 マンションのエントランスでずっと彼女を待っているうちに私はうとうととしてしまったらしい。

「美優さん、どうしたんですか?」

 気がつくと、百合ちゃんに肩を揺さぶられていた。

「私・・・もうどこにも居られなくなちゃった」

 笑いながら言ったが、感情が溢れてきて涙がポロポロとこぼれ落ちる。

「美優さん、取りあえずうちに入りましょう」

 百合ちゃんに肩を抱かれ、彼女の家に入る。

 でも、涙は止まらない。

「美優さん、何があったんですか?」

 ハンカチで涙を拭いながら百合ちゃんが聞いてくる。

「玲王の家を出てきたの。婚約者がいたんだ」

「・・・・」

 私の言葉に百合ちゃんが唖然とする。
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