ルージュのキスは恋の始まり
 そして、百合ちゃんが事務所にお弁当を届けると、私は百合ちゃんと2人でこの産婦人科に来た。

 でも、百合ちゃんが入れるのは待合室まで。

 私の名前が呼ばれた時、百合ちゃんは私の手をぎゅっと握ってくれた。

「大丈夫です。何があっても私、美優さんの力になりますから」

 気休めかもしれない。

 でも、私はこの言葉がなかったら診察室に入る事すら出来なかったかもしれない。

 ただでさえ怖い産婦人科の初診。

 婦人科の健診の経験はあったけど、下の下着を脱いだ状態であの診察椅子に座るのは何度経験しても恐怖だった。

「では、次は2週間後にまた来て下さい」

 気づけば先生が私にエコーの写真を手渡した。

「・・・・」

 そこに写っていたのは1センチ程の私の赤ちゃん。
< 300 / 391 >

この作品をシェア

pagetop