ルージュのキスは恋の始まり
 私のお腹の中に命が宿っている。

 妊娠という言葉が改めて現実味を増す。

 不安で怖かった。

 診察室を出ると、待合室にいる百合ちゃんのところへ戻る。

「やっぱり妊娠してるって」 

 私は今にも死にそうな顔をしていたかもしれない。

 百合ちゃんはそんな私を叱咤した。

「何暗い顔してるんですか!欲しくても赤ちゃん出来ない人だっているんです。美優さんの好きな人の赤ちゃんでしょう?」

 好きな人・・・・。

 玲王の赤ちゃん。

「・・・うん」

 私は涙ぐみながらエコーの写真を握り締める。

 ごめんなさい。

 私・・・自分の事しか考えてなかった。

 自分が辛くて現実を見ようとしなかった。
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