ルージュのキスは恋の始まり
「え~、残念。私、イケメン大好きなのに。研究所にいると、研究所以外の男性に会う機会少いんですよね。毎日会うのは井上君だし、たまには刺激が欲しい~」 

「つまらない顔で悪かったですね」

 亜紀ちゃんの言葉に井上君がブスッとした表情で呟く。

「そんなことないよ。私は、毎日井上君に癒されるよ」

 白衣を脱ぎながらすかさずフォローを入れると、井上君がはにかみながら微笑んでくれた。

 彼には男臭さがない。

 チワワみたいに可愛くて、何より・・・安全だ。

「じゃあ、お疲れさま」

 2人に声をかけると、走って門まで向かう。

 門の少し先に黒いバンが停まっていた。

 私が近づくとガラガラっとドアが開く。

「お疲れ、美優」

 サングラスをかけた大河が顔を出す。
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