ルージュのキスは恋の始まり
「大河、誰かに見られたらバレるわよ」

 私がハラハラしながら慌てて注意すると、大河はクスッと笑った。

「大丈夫。美優は心配性だな」

 私が車に乗り込むと、大河はサングラスを外した。

「でもね、芸能記者とかファンに追いかけ回されたらどうするの!」

「結構バレないもんだよ。それに、俺はアイドルじゃないしね」

 大河が魅力的な笑顔でウィンクする。

 いえ、今のあなたの人気はアイドル以上だから。

 そう突っ込みたいところだけど、この笑顔を見てしまうと何も言えない。

 何でも許してしまう。

「美優さん、お疲れ様です」

 私に声をかけてきたのは、今ハンドルを握っている大河のマネージャーの百合ちゃん。

 ちょっと抜けてるところもあるけど、いつも一生懸命で可愛い。

 大河にはマネージャーが二人いて、彼女は見習い中だ。

「百合ちゃん、いつもありがとう」
 
 3年前の事件があってから、私は自分一人では通勤出来なくなった。
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